足のむくみはなぜ起きる?
私たちヒトの身体は、心臓がポンプとなって全身に血液を送り出しています。これにより酸素や栄養が各臓器に届けられ、同時に二酸化炭素や老廃物を回収されているのです。
送り出された血液は再び心臓に戻るわけですが、足から心臓に向かって血液が流れる静脈には、重力に負けないポンプの力が必要になります。その、心臓に次ぐ第二のポンプとなっているのが、ふくらはぎの筋肉です。ふくらはぎの筋肉が収縮することで、重力に打ち勝って、血液を心臓へと戻すことが可能になっているのです。
このふくらはぎの筋肉の収縮が何らかの理由によってうまくいっていない時に、血液が溜まり、足がむくみます。指で押した後しばらくへこんだままになっている、靴下の痕が何時間たっても残っているという場合には、重いむくみが疑われます。
足がむくむのは何が原因?むくみやすい人の特徴と疾患について
一過性のむくみを引き起こす生活習慣
一過性の足のむくみは、多くの方が一度は経験しています。半日たてば治っているようなむくみであれば「病気だ!」と過度に慌てる必要はありません。ただ、原因を取り除かないまま放置していると疾患の原因となることもあるため、注意が必要です。
長時間の同じ姿勢や立ち仕事
立ちっぱなし、座りっぱなしでいると、どうしてもふくらはぎの動きが少なくなり、血流が低下します。女性の方でスカートを履いている場合などは冷えも加わり、さらなる血流およびポンプ機能の低下が懸念されます。
筋力の低下
運動不足、加齢などによって脚の筋力が低下すると、ポンプ機能が低下し、むくみの原因になります。
食生活の乱れ
過度なダイエットや栄養不足による筋力低下も、ポンプ機能の低下やむくみを引き起こします。
またアルコールは体内の水分量を減らし、血液の濃度を高めます。すると、身体は正常な濃度に戻そうと水分を欲し(喉が渇き)、この時に摂った多量の水分が一時的なむくみになります。
体の冷え
身体が冷えると、血流が低下し、むくみにつながります。冬場だけでなく、夏場のエアコンの効いた部屋での冷えにも注意が必要です。
放っておくと危険なむくみを引き起こす疾患
食生活はきちんとしている、立ちっぱなし・座りっぱなしがない、筋力も落ちていないといったように、特に思い当たる原因がないのにむくみが続いている、という場合には注意が必要です。
心臓の障害
心臓が担うポンプ機能に何らかの障害をきたしていると、血流も低下するため、むくみが生じる可能性が高くなります。いわゆる心不全という状態です。
肝臓や腎臓の障害
血液に含まれるたんぱく質「アルブミン」は、血液の水分量を調整する役割を担っています。
肝臓や腎臓に障害をきたし、アルブミンの量が低下すると、血液中の水分量を適切にコントロールできなくなり、むくみを引き起こすことがあります。
リンパ浮腫
血液と同じように全身をめぐるリンパ液の流れが、がんの手術などによって悪化することがあります。すると、リンパ液が足や手に溜まり、むくみの原因となることがあります。
下肢静脈瘤
足の静脈の逆流防止弁に異常をきたし、ボコボコとした静脈の瘤が形成される病気です。
深部静脈血栓症
いわゆるエコノミークラス症候群です。
長時間のバス・飛行機での移動、寝たきりなどによって同じ姿勢を続けることで、血栓が生じます。足の静脈に血栓が生じた場合、足がむくみます。
小まめな水分摂取、ストレッチ・運動(立ち上がれない場合はかかと上げ運動など)、弾性ストッキングの着用などで予防が可能です。
片足だけむくんでいる場合は深部静脈血栓症かも?
片足だけ、特に突然むくみが現れた場合には、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)が疑われます。肺動脈が詰まり、命を落とすケースもあります。気づいた時にはすぐに医療機関を受診してください。
女性のむくみの原因
女性は男性よりもむくみが生じやすい傾向にあります。
これは、男性と比べて筋肉量が少ないこと、月経・妊娠などに伴うホルモンバランスの変動が多い・大きいことが影響しているものと考えられます。また、運動をせず食事を減らすだけの無理なダイエットが原因になることもあります。
高齢者のむくみの原因
食事・運動習慣を意識した生活を送っていると、加齢とともに筋肉量は低下していきます。また、やはり相対的に日中の活動量、水分摂取量も少なくなるため、ご高齢の方は、若い方と比べるとむくみを起こしやすい傾向にあります。
足のむくみの検査・診断
問診、視診、触診などの上、必要な検査を行い、診断します。
検査には、尿検査、血液検査、超音波検査、CT検査などがあります。また、薬の副作用で起こるむくみもあるため、お薬手帳またはお薬そのものをお持ちください。
足のむくみの治療法
足の筋力の低下が疑われる場合には、運動療法・食事療法を行います。食事療法では、栄養バランスの良い食事を摂りながら、減塩に取り組みます。また、利尿剤の内服が有効となることもあります。
心臓・肝臓・腎臓などの内臓の異常が原因である場合には、各疾患に応じた治療を行います。下肢静脈瘤については、カテーテル治療、グルー治療、ストリッピング手術、硬化療法、弾性ストッキングなどによる治療が可能です。
その他、内服しているお薬が原因と思われる場合には、処方医と連携を取り、お薬の量を調整したり、種類を変更したりして対応します。
むくみ解消のためのセルフケア
むくみ解消のため、ご自宅でできるセルフケアをご紹介します。むくみ予防という意味でも有効ですので、ぜひお試しください。
マッサージやストレッチ
ふくらはぎをもんであげたり、伸ばしてあげると、ポンプ機能の助けとなります。お風呂には入っている時に行うのも良いでしょう。
運動
下半身の筋肉量の減少は、上半身の筋肉量の減少よりも気づきにくいと言われています。ウォーキング、軽いジョギング、水泳など、ご自身のお身体の状態に合った、無理のない運動をしましょう。
食事
栄養バランスの整った食事を摂ることを前提としながら、塩分の排出を促すカリウム、血流を改善するビタミンEを意識的に摂取します。 また、水分や塩分の摂り過ぎに注意します。
体を冷やさない
冬場だけでなく、夏場のエアコンの効いた部屋などでも、カーディガンやひざ掛けなどを使って、きちんと体温調節をしましょう。特にスカートを履いている方は、足が冷えやすいので注意が必要です。
弾性ストッキング
医療用の弾性ストッキングは、血流の循環を促すための特殊な構造をしています。むくみや下肢静脈瘤の予防として有効です。
休息(横になる)
横になると、下肢の血液が心臓へと戻りやすくなります。夜間はもちろん横になって眠りますが、その時、足を少し高くするのも良いでしょう。
日中についても、たとえば5分だけ横になって休憩するなどすると、むくみの予防・改善に有効です。
足のむくみでお悩みの方は一度ご相談ください
むくみは、美容業界でもよくきかれるお悩みです。また、お酒をたくさん飲んだ翌日などの、一時的なむくみとして多くの方がご経験されています。そのためどこか、「健康への影響はない・少ない」というイメージがあるようです。
確かに、大きな心配のないむくみは少なくありません。しかし一方で、何らかの疾患のために生じるむくみも、決して少なくないのです。
特に、足のむくみが何日も続いている・なかなか取れなくなった・片足だけむくんでいるといった時には、お早めに当院にご相談ください。もちろん、それ以前の段階のむくみが気になるという方も、お気軽にご相談いただけます。