歩行時にかかとが痛む「足底腱膜炎」とは
足底筋膜炎との違いは?
足底腱膜炎とよく似た名称の疾患に、足底筋膜炎があります。
解剖学的に正確に考えると、腱膜と筋膜は異なるものです。しかし、足底腱膜炎のうちの多くで筋膜に関連した部分で炎症が起こる(筋膜炎である)ことから、基本的に同じ扱いとなっています。
肥満や立ち仕事も原因?足底筋腱膜になりやすい人
足底腱膜炎は、足底腱膜に負荷がかかるなどして断裂が起こることを主な原因として発症します。
リスク要因としては、足裏に繰り返し衝撃を与えるスポーツ、加齢・疲労にともなう筋膜へのダメージ、履きなれていない靴の使用などが挙げられます。
また、もともと足のアーチが高い・低い、ふくらはぎやアキレス腱が硬いといったことも、発症に影響するものと考えられます。
特に、以下のような人が、足底腱膜炎になりやすいと言えるでしょう。
- マラソンや走り込み、ダンスなど、日々足裏に負担のかかる運動をしている人
- 練習などで、アスファルトなどの硬い地面を走る人
- 長時間の立ち仕事をしている人
- 足のアーチが高い人、低い人
- 足に合っていない靴を履いている人
初めの一歩が痛む!踵やその周りが痛い?足底腱膜炎の症状
- 歩行時のかかとまわりの痛み
- 足裏が張っている感じ
- 足の裏を押したときの痛み
- 運動開始後、徐々に和らぐ痛み
痛みは主に、かかとで発生します。痛みが朝だけ強く出る、夕方に出る、運動した翌日に出るなど、さまざまなケースがあります。
足底腱膜炎の検査・診断
MRI検査や血液検査が追加されることもあります。
足底腱膜炎の治療法について
保存療法
足底腱膜炎の治療では、保存療法が基本となります。
足底への負担を軽減するため、運動を控え、安静に努めます。
リハビリテーション
痛みが和らげば、ストレッチや筋力とレーニングを行います。下肢の後方の柔軟性の強化、足指の使い方の改善なども有効です。
物理療法と組み合わせて、リハビリテーションを行います。
薬物療法
非ステロイド系の消炎鎮痛剤の内服、外用などを行います。
注射
痛みによって日常生活に支障をきたしている場合など、ステロイド注射が有効です。
期間・回数を決めて、限定的に使用します。
動注治療
炎症により異常な新生血管が生じている場合には、動注治療を行います。
動脈に細い針を刺して、そこから新生血管に蓋をして(塞栓)、炎症・痛みの軽減を図ります。
ハイドロリーリース
超音波画像でリアルタイムに患部を観察しながら、腱膜へと薬液を注射します。
腱膜の癒着を剥がし、痛みを軽減する効果が期待できます。
似たような症状で足根管症候群がありますが、その場合、後脛骨神経のハイドロリリースを行います。
超音波画像で後脛骨神経を確認しながら、リアルタイムに神経周囲に薬液を注入し、神経周囲の癒着を剥がして症状の緩和を図ります。
自分でできるセルフケアとやってはいけないこと
ご自身でできるセルフケアと、やってはいけないことをご紹介します。ご不安な場合には、必ず医師にご確認ください。
また、痛みのある状態でのストレッチやトレーニングはおやめください。
ストレッチ
簡単にできるストレッチを2つ、ご紹介します。
ストレッチ1
あぐらをかき、足の指を反らせた状態で、足裏を親指で押し揉むようにします。気持ちいいくらいの力に留めてください。
ストレッチ2
立った状態で、足を前後に開きます(肩幅くらいの広さ)。後ろに位置する足のかかとを床につけた状態で、体重を前に位置する足へと移動していきます。ふくらはぎの筋肉が伸びているのを意識してください。
×やってはいけないこと
- 痛みが出ているあいだは避けてください。
- 痛みが治まってからも、無理をしないでください。
- できる限り、医師の指導のもと実践するようにしてください。
足底のトレーニング
何もしていなければ、身体の筋肉は加齢とともに衰えていきます。
足底の筋肉も例外ではありません。
トレーニング1
足の指を動かし、グー・チョキ・パーを連続してつくります。夜寝る前や、お風呂などで試してみてください。小さなお子さんとの遊びでも練習できます。
トレーニング2
床に腰を下ろした状態で、前方にタオル(フェイスタオルくらいの大きさ)を敷きます。その端に足を置き、指先を伸ばしたり縮めたりして、タオルを手前に引き寄せます。
×やってはいけないこと
- 痛みが出ているあいだは避けてください。
- 痛みが治まってからも、無理をしないでください。
- できる限り、医師の指導のもと実践するようにしてください。
テーピング
外側のくるぶしの下を起点とし、かかとの先端を回して、内側のくるぶしを通過します。そのまま、外側のくるぶしの上まできたら、テープをカットして貼り付けます。
かかとが内側へと倒れることを防ぐテーピングです。
×やってはいけないこと
- 医療従事者、トレーナーなど、専門家の指導なしでは行わないでください。
安静にする
痛みがあるあいだは、できるだけ安静にしてください。
痛みが治まってからは、ウォーキングなど、軽い運動を行いましょう。
×やってはいけないこと
- 痛みが治まってからもずっと動かないでいると、筋力や柔軟性の低下につながります。
冷却する
急性期はアイシングなどで、痛みの軽減が期待できます。
×やってはいけないこと
- 痛みがある程度落ち着いてからは、冷却は逆効果となることがあります。基本的には、入浴などで適度に温めるようにします。
鎮痛薬
足底の痛みで日常生活に支障をきたしているがすぐに受診できない、という場合には、市販の痛み止めなどを服用していただいても構いません。
×やってはいけないこと
- 痛み止めに頼り過ぎないようにしてください。あくまで応急的な対応であり、根本的に治すためには、医療機関での治療が必要です。
合う靴を履く
縦方向だけのサイズだけでなく、横幅、アーチの高さなどについても、ご自身の足に合った靴を履くようにしましょう。インソールによる調整も有用です。
また、フローリングの上を裸足で歩くのも、足裏への負担となります。ルームシューズなども必要に応じて使用しましょう。
×やってはいけないこと
- ヒールのある靴、速さを求めて底を薄くした靴、クッション性のない靴は、避けるようにします。