ハイドロリリースで痛みの元に正確にアプローチ
ハイドロリリースとは、超音波画像で筋膜・周辺組織を確認しながら、筋膜へと薬液(微量の麻酔薬を含む生理食塩水)を注入する治療です。
これにより、筋膜の癒着を剥がし、筋肉の動きの改善・痛みの軽減を図るのです。通常の治療では痛みの改善が見られない症例などに有効です。また、筋膜だけでなく神経の癒着を剥がす効果が近年になって確認され、しびれ改善にも効果が期待できます。
“微量の麻酔薬を含む生理食塩水”を“ピンポイント”に注入する手法であるため、非常に安全性の高い治療です。低侵襲であり、何度でも繰り返し受けていただけます。
筋膜の働きと異常時の症状
「筋膜」は、筋肉表面・筋線維・骨・内臓・血管・神経などさまざまな組織とつながっています。
各組織を保護したり、支持したり、力を伝えたりといった役割を担っています。
この筋膜に異常が起こると、以下のような症状が現れます。
- 痛み、しこり(肩こり、首のこり、腰痛など)
- 筋肉パフォーマンスの低下
- 柔軟性の低下
- 関節可動域の狭まり
ハイドロリリースと痛み止めの局所注射の違い
痛み止めや麻酔液などを注射する局所注射(ブロック注射)は、注入する薬液の作用のみで痛みの改善を目指します。
一方ハイドロリリースは、微量の麻酔薬を含む生理食塩水の注入によって、筋膜・神経の癒着を剥がし、痛みの改善を目指します。「筋膜・神経の癒着を剥がし」という工程が挟まれることは、根本的な問題にアプローチしているということであり、麻酔の効果が切れてからも、痛み・しびれを抑える効果がより長持ちしやすいと言えます。また、麻酔液が少量であるため、副作用のリスクも少なくなります。
※ブロック注射が“その場しのぎの治療”というわけではありません。痛みを取り除くことで自律神経の失調を改善したり、身体を動かし血流が改善されることで、痛みの悪循環を断ち切る効果が期待できます。疾患や障害、癒着の程度などに応じて、適切に使い分けていきます。
※ハイドロリリース、ブロック注射ともに、痛みが取れた時にリハビリテーションを行うことが重要になります。これを怠ると、また同じように痛みが再発する可能性が高くなります。
ハイドロリリースが適応になる疾患
- 肩こり
- 頚部痛、寝違え、むちうち
- 背部痛
- 腰痛、ぎっくり腰
- 肘部管症候群
- 手根管症候群
- 梨状筋症候群
- 術後創部癒着
- 筋筋膜性腰痛
- 外傷後の後遺症
など
ハイドロリリースのメリットとデメリット(副作用)
メリット | デメリット |
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ハイドロリリースの効果を高めるには
ハイドロリリースは、ブロック注射とともに、その注射をした直後からの痛みの軽減が期待できる治療です。
しかし、その痛みのない状態を維持したり、より高い効果を得るためには、リハビリテーションが欠かせません。ストレッチ、筋力強化、姿勢改善指導、運動習慣指導などを行い、患者様の快適な毎日をサポートします。
ハイドロリリースが効かない部位の対処法
関節内の炎症、椎間板ヘルニア、頚椎症、交感神経の過緊張による痛みなどについて、ハイドロリリースの効果は限定的と言われています。
その場合には、ヒアルロン酸注射、神経ブロック注射、点滴などの治療を行ったり、ハイドロリリースと併用することで、痛みの軽減を図ります。
ハイドロリリースの費用
ハイドロリリースは、1カ月に1回、1部位までであれば、保険適用の治療として受けることができます。
1カ月以内に同部位への2回目の注射、2部位への注射を行う場合には、自費診療扱いとなります。また、1カ月以上をあけて受診された場合でも、1度に複数以上の部位への注射を希望される場合には、1部位目が保険診療、2部位目以降は自費診療となります。
保険適用の場合
1割負担 | 2割負担 | 3割負担 | |
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1回(初回・月に1回) | 約700円 | 約1,300円 | 約2,000円 |
保険適用外の場合
保険適用外(税込) | |||
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同日に複数・同月に2回目以降 | 同日+3,300円 同月2回目以降5,500円 |
症例
30歳代女性
デスクワークの仕事を始めてから肩こり、頚部痛を自覚するようになった。 整体院での施術や針治療、カッピングなど行うも数時間で、症状がぶり返している状態であったため、当院を受診。
肩こりを自覚している部分に一致して、左優位に筋膜の肥厚を認めた(図1)。
同部に対して、超音波ガイド下で針を穿刺後(図2)、薬液を注入(図3)。
直後より今までに無いような症状の改善を自覚した。 現在も当院通院し、治療継続中。
図1 | 図2 | 図3 |
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