膝軟骨がすり減って痛む「変形性膝関節症」
これを、「変形性膝関節症」と呼びます。
放置していると、関節液が膝にたまるようになります(水がたまる状態)。
変形性膝関節症は、中年以降の方に好発します。また、女性の発症率は男性の約4倍にのぼります。
変形性膝関節症の症状
初期症状から重症化するまで
初期症状
- 膝を動かし始めたときの痛み
- 朝起きて1~2歩目の膝の痛み
- 歩いているうちに痛みが和らぐ
歩き始めは痛みがあるものの、その後すぐに消失するというのが特徴です。
中期症状
- 膝を動かしているあいだの痛み
- 特に膝の内側が痛い
- 両足の膝の間隔が広くなる(O脚)
動作開始時だけでなく、動作を継続しているあいだも痛みが続くようになります。痛みはストレスとなり、QOLを低下させます。
末期症状
- 安静時を含めて常に膝が痛む
- 動作時は特に痛む
- O脚の悪化
この頃になると、歩く時だけでなく、座る・立ち上がる・しゃがむといった動作でも、そして安静時でも膝が痛むようになります。
膝の曲げ伸ばしが難しくなる?
中期以降になると、歩く時だけでなく、「膝を曲げ伸ばしする動作」そのものに痛みが出るようになります。よって、座ったまま足を伸ばすなどの動作も辛くなります。
どんな人に多い病気?変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症の最大の原因は、加齢です。日々の膝への負担により、誰でも少しずつ軟骨が擦り減ります。
その他、肥満、激しい運動、遺伝なども発症に関与しています。
どんな人がなりやすいか?
特に以下のような人が、変形性膝関節症になりやすいと言えます。なお女性に多いのは、筋肉量が少ないこと、ヒールの高い靴を履く人が多いこと、閉経後に女性ホルモンの分泌が低下することなどが影響していると言われています。
- 50歳以上の人
- 女性
- 肥満傾向の人
- 農業、漁業、重い荷物の積み下ろしなど、膝に負担のかかる仕事をしている人
- サッカー、スキー、スノーボードなど膝に負担のかかるスポーツをしている人
- リウマチ、骨壊死の既往がある人
- 変形性膝関節症の家族歴がある人
変形性膝関節症の検査・診断
また必要に応じて、関節液を抜き取り調べる検査、血液検査などを追加します。
変形性膝関節症の治療法
保存療法
運動療法(ストレッチ・筋トレ)
薬物療法で痛みを軽減した上で、ストレッチや筋肉トレーニングなどを行います。柔軟性や筋力がつくことで、膝への負担が軽減されます。
薬物療法(ステロイド注射や・痛剤など)
ステロイド注射や鎮痛剤などを用いた薬物療法を行います。「痛い→運動ができない→筋力が低下する→さらに痛い」という悪循環を断ち切るという意味でも有効です。
ヒアルロン酸注射
関節液に似た性質を持つヒアルロン酸を注入し、関節の滑りを改善します。
装具療法(サポーター・ブレース装着)
血行促進と可動域拡大を目的とした温熱療法、炎症・腫れを鎮める寒冷療法などを行います。
物理療法
血行促進と可動域拡大を目的とした温熱療法、炎症・腫れを鎮める寒冷療法などを行います。
PRP注射
ひざ関節内や靭帯などに注射で投与することで自己修復能力を一時的に高め、痛みや機能の改善を図ることができます。
手術療法
ここまでの治療で十分な効果が得られない場合には、手術を検討します。
骨切り術、人工関節置換術、関節鏡視下手術などがあります。
当院での変形性膝関節症の治療の流れ
まず問診・触診、レントゲンや超音波などで診察を行い、ヒアルロン酸注射やステロイド注射、運動療法など保険診療で可能な限り、治療を行います。
それでも改善しない方、さらなる症状の改善を希望する方へは手術をしない方法としてPRP注射を行います。 他院ですでに保険診療を受けられて効果を感じない方や、PRP注射をご希望の方は初回からPRP注射を行うことができます。
日常生活でしてはいけないこと
痛みに負けまいと、無理にスポーツを継続するということは絶対におやめください。ただし、痛みのない範囲でのウォーキングは、筋力維持・強化に有効です。 また、できるだけ避けるべき動作・習慣としては、以下のようなものがあります。
- お尻を床につけて座る
- 和式トイレを使う
- 布団で寝る(横になる、起き上がる、布団を上げ下げする時に膝に負担がかかります)
- 喫煙(軟骨を構成するコラーゲンの生成に欠かせないビタミンCを減少させます)
- 飲み過ぎ(軟骨の弾力性を低下させたり、炎症を悪化させたりします)
変形性膝関節症は自力で治せる?
変形性膝関節症は、膝の軟骨が擦り減る治療です。そのため、自然に治るということはありません。ストレッチや筋力トレーニングなどによって膝への負担を軽減することができますが、自己流でのストレッチ・トレーニングは炎症を強めたり、軟骨のすり減りを加速させる原因になることがあります。必ず、医療機関で治療を受けましょう。その際には、ご自宅で取り組める正しいストレッチ・筋力トレーニングの指導も受けられます。
ダイエットも有効ですが、こちらも食事療法・運動療法を組み合わせて正しく行うためには、やはり医療機関での治療・指導を受けることをおすすめします。