強い痛みを伴って足がつる「こむら返り」とは
ふくらはぎがつることを一般に「こむら返り」と言いますね。ふくらはぎのことを、かつては「こむら(こぶら)」と呼んだことに由来するそうです。
「つる」ことは医学的には「有痛性筋痙攣」と呼び、筋肉のけいれんおよび強い痛みを伴います。筋肉は普段、脳からの指令を受けて思った通りに動かすことができますが、何らかの原因によってこのメカニズムが障害されると、筋肉が痙攣状態に陥り、こむら返りが起こります。
こむら返りの原因と関連する病気
ふくらはぎを動かす時には、その指令が大脳から発信されます。そして脊椎の神経を介し、ふくらはぎにつながる末梢神経へと届けられ、初めてふくらはぎの筋肉が思い通りに動きます。 このメカニズムが、長時間の運動、強度の高い運動、ウォーミングアップ不足、ふくらはぎの筋肉の緊張、運動不足、水分不足、冷えなどによって障害される時、筋肉が異常な収縮を見せ、こむら返りが起こります。
原因が上記のような要素にある場合のこむら返りは、基本的に心配ありません。しかし、下肢静脈瘤、腰椎椎間板ヘルニア、腎不全、肝障害、動脈硬化、甲状腺異常、妊娠などが、こむら返りの原因となることもあります。
これまで全然起こらなかったこむら返りを経験した、頻度が高くなってきたという場合には、お早めに当院にご相談ください。
なぜ寝ている時にこむら返りが起きる?
寝ている時、私たちは気づかないうちに結構な量の汗をかいています。一方で水分摂取はしないため、就寝前に水を飲むなどの対策をしないと、やや脱水に近い状態になることが多くなります。加えて運動量もほぼゼロであるため、全身の血流が低下し、身体が冷えた状態に陥ります。
その状態で寝返りを打つなどして筋肉に刺激が加わった時、筋肉が異常な収縮をして、こむら返りが起こることが多くなります。
特に、60歳以上の方は夜間のこむら返りが起こりやすいと言われています。寝る前のアルコールを避ける、一方で適度な水分を摂取する、快適な室温に調整するといった対策が考えられます。
なぜ冬は足がつりやすい?
冬は、その気温による冷えによって、暖かい季節と比べると血行が悪くなります。また、身体を動かさずにじっとしている時間が長くなるという方もいるでしょう。
血行が悪くなると、筋肉の異常な収縮が起こりやすくなるため、結果としてこむら返りのリスクが高くなるのです。
なぜ妊娠中にこむら返りが起きやすくなる?
お腹の赤ちゃんが大きくなるほど、その周囲の血管が圧迫されます。また、体重も増え、運動不足になりがちです。赤ちゃんのために母体のカルシウム・マグネシウムといったミネラルも不足がちとなり、妊娠中は通常、血行が悪くなります。
すると、やはりこむら返りが起こりやすくなります。
なぜ肝臓が悪いとこむら返りが起きる?
肝硬変などの肝障害になると、さまざまなアミノ酸異常が発生します。その1つが、必須アミノ酸である「メチオニン」の異常です。すると、筋肉の働きと関係の深い「タウリン」「カルニチン」が不足することとなり、こむら返りが起こりやすくなると言われています。
肉離れが起きると痛みが残る?こむら返りの症状
こむら返りの重たる症状は、ふくらはぎの筋肉の強い痛み(痙攣)です。
前触れなく突然、数秒~数分、筋肉の収縮とともに強い痛みに襲われます。またこの時、局所が隆起し硬くなっています。
肉離れに至り、翌日以降にも痛みが残ることがあります。
自分でできるこむら返りの治し方と予防について
こむら返りは、患者様ご自身の対策により、起こりにくくすることが可能です。
対処法と合わせて、ご覧ください。
こむら返りが起きた時の対処法
- こむら返りを起こした脚を伸ばします。
- 同じ側の手で、つま先を掴みます。足の力は抜いてください。
- 掴んだ手をゆっくり手前に引き、ふくらはぎ、足裏を伸ばします。
- 気持ちいいくらいの状態を保持します。
※グイッ、グイッと何度も引っ張るのではなく、じんわりと力をかけるようにしてください。
※手がつま先に届かない場合には、両手でタオルの端を持ち、その先をつま先に引っ掛けて行います。
ミネラル分の多い食べ物をとる
カルシウムやマグネシウムは、筋肉の興奮を抑えたり、正確な神経伝達を支えたりといった作用を持ちます。
牛乳、小魚、海藻類、豆類などが不足している場合には、意識的に摂取してください。
水分補給
水分補給が少ないと、ミネラルが不足し脱水症状に陥り、こむら返りが起こりやすくなります。季節を問わず、小まめに水分補給を行いましょう。夏場などは特に「喉が渇いたと思う前に飲む」よう気をつけてください。
また繰り返しとなりますが、睡眠中は多量の汗をかきます。就寝前には、コップ一杯程度、水を飲むと良いでしょう。反対に、寝る前のアルコールは避けてください。
ストレッチ
普段からストレッチを習慣化しておくと、筋肉が適度に刺激されたり、血行が良くなったりして、こむら返りが起こりにくくなります。
「こむら返りが起きた時の対処法」でご紹介した方法でも構いませんが、そもそも「つる」というのは太腿からお尻などの筋肉でも起こります。以下のような方法で、脚全体の筋肉を伸ばしましょう。
脚全体の筋肉を伸ばすストレッチ
手を壁につき、脚を前後(肩幅と同じかそれより少し広いくらい)に広げます。腰をゆっくりと前方へと押し込むと、お尻、太腿、ふくらはぎの筋肉が伸びます。
こむら返りを繰り返す場合には一度ご相談ください
ほとんどのこむら返りは、長時間の運動、強度の高い運動、ウォーミングアップ不足、ふくらはぎの筋肉の緊張、運動不足、水分不足、冷えといった、比較的除去しやすい原因によるものです。正しく対処したり、回避すれば、頻度は少なくなります。
一方で、下肢静脈瘤、腰椎椎間板ヘルニア、腎不全、肝障害、動脈硬化、甲状腺異常などを原因として、頻繁にこむら返りが起こるというケースも見られます。はっきりと原因と特定し、必要に応じた治療を行うため、気になる方はお早めに当院にご相談ください。