粉瘤とは
粉瘤とは、皮膚の下にできる良性の腫瘍で、医学的には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」とも呼ばれます。皮膚の一部が袋状になり、その中に皮脂や角質(古い皮膚のカス)が溜まることで形成されます。
粉瘤は基本的に痛みがなく、ゆっくりと大きくなるのが特徴です。しかし、炎症を起こすと赤く腫れて痛みを伴うことがあり、場合によっては膿が溜まることもあります。
粉瘤は全身どこにでもできる可能性がありますが、特に以下の部位にできやすいとされています。
- 顔・首・背中・胸部(皮脂の分泌が多い部分)
- 耳の後ろ・頭皮(皮膚の摩擦が多い部分)
- デリケートゾーン(外陰部や鼠径部)
粉瘤は一度できると自然に治ることはほとんどなく、適切な治療が必要です。
粉瘤の原因
粉瘤ができる原因は完全には解明されていませんが、皮膚のターンオーバー異常や皮膚の損傷が影響していると考えられています。主な原因として以下のようなものが挙げられます。
① 皮膚の詰まり
皮膚の表面にある毛穴や皮脂腺の出口が塞がることで、古い角質や皮脂が皮膚の下に溜まり、袋状の構造(嚢胞)が形成されます。
線維芽細胞の増殖や抗酸化作用があり、血管形成や肌のハリをサポートします。
② ケガや手術後の傷跡
皮膚の浅い部分に傷がつき、その部分の細胞が異常増殖すると、粉瘤ができることがあります。耳ピアスの穴の近くや手術の縫合跡に発生することもあります。血管形成を促進し、血行改善や発毛、しわ予防に役立ちます。
③ 皮膚の摩擦や圧迫
リュックや衣類の擦れ、長時間座る習慣などが影響し、特定の部位に粉瘤ができやすくなります。
④ 遺伝的要因
粉瘤は家族内で発症することがあり、遺伝的な素因も関与していると考えられています。
粉瘤の症状
粉瘤は、皮膚の下にできるしこりとして現れます。以下のような症状が特徴的です。
① しこり(腫瘤)の形成
- 表面はなめらかで、触ると弾力がある
- 中央に黒い点(開口部)があることが多い
- 皮膚の奥深くにある場合、はっきりした黒点が見えないこともある
② 炎症が起こると腫れや痛みが発生
- 赤く腫れ、触るとズキズキ痛む
- 化膿すると膿がたまり、黄色や白っぽい膿が出る
- 炎症が強い場合、発熱を伴うこともある
③ 放置すると増大し、再発しやすい
- 数ヶ月〜数年かけてゆっくりと大きくなる
- 炎症が収まっても、根本的な治療をしないと繰り返し腫れる
粉瘤は、炎症を繰り返すと瘢痕(傷跡)として残りやすくなるため、早めの治療が推奨されます。
当院では女性医師が粉瘤手術を行っています
粉瘤を治療するためには、手術による嚢胞(のうほう)の完全摘出が必要です。
特に女性医師による粉瘤手術は、下記のようなメリットがあります。
- デリケートゾーンの粉瘤でも安心して相談できる
- 傷跡が目立たないよう配慮した治療が可能
- 患者の不安を和らげる丁寧な対応
手術方法
① くり抜き法(小さな傷で済む)
- 皮膚に小さな穴を開け、そこから粉瘤の袋ごと取り出す
- 傷跡が小さいため、美容面を気にする方におすすめ
- 縫合が不要なことが多い
② 切開法(炎症が強い場合に適用)
- 皮膚を数センチ切開し、粉瘤を取り除く
- 大きな粉瘤や炎症を伴う場合に行う
- 傷口を縫合するため、術後は抜糸が必要
③ 炎症がひどい場合のドレナージ
- 炎症や膿が強い場合、まず膿を出して炎症を抑える
- 数日後に改めて手術を行い、完全に摘出する
粉瘤手術の流れ
Step1手術前の準備
診察・問診
粉瘤の状態を確認し、治療方針を決定
デリケートゾーンや顔の粉瘤は、傷跡が目立たない方法を検討
局所麻酔
粉瘤の周囲に麻酔を注射し、痛みをなくす
Step2手術
粉瘤を摘出
くり抜き法 or 切開法を選択し、粉瘤を袋ごと除去
縫合(必要に応じて)
傷口が大きい場合、糸で縫合
Step3手術後のケア
当日は入浴を避け、翌日以降シャワー可能
傷口を清潔に保ち、抗生剤を服用(必要な場合)
1週間程度で抜糸(切開法の場合)
粉瘤手術の費用の目安
粉瘤の摘出手術には、健康保険が適用されます。(3割負担の場合)
以下の一覧表の料金が目安となります。
3割負担の場合 | |
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露出部(頭・顔・首・肘から先・膝から下) | 2センチ未満 5,310~5,910円 2~4センチ 11,340~11,940円 4センチ以上 13,410~14,010円 |
露出部以外 | 3センチ未満 4,170~4,780円 3~6センチ 10,020~10,630円 6センチ以上 12,810~13,420円 |
粉瘤手術のよくある質問
粉瘤は自然に治りますか?
いいえ、粉瘤は自然に治ることはほとんどありません。
一時的に炎症が治まることはありますが、袋(嚢胞)が皮膚の下に残るため、再び腫れる可能性があります。
根本的な治療には手術での摘出が必要です。
粉瘤手術は痛いですか?
手術時には局所麻酔を使用するため、痛みはほとんど感じません。
麻酔の注射時に少しチクッとする程度ですが、施術中の痛みはありません。
術後は軽い痛みや違和感が出ることがありますが、痛み止めを服用すれば問題なく過ごせます。
粉瘤手術の傷跡は目立ちますか?
手術方法や粉瘤の大きさによりますが、「くり抜き法」を用いると傷跡が小さく済みやすいです。
一方で、大きな粉瘤や炎症を伴う場合は「切開法」を行うため、多少の傷跡が残ることがあります。
ただし、女性医師の施術では美容面にも配慮し、できるだけ目立たないように縫合や治療を行います。
手術後のケアはどのようにすればいいですか?
手術後は傷口を清潔に保つことが大切です。医師の指示に従い、以下のポイントに注意しましょう。
・手術当日は入浴を避ける(シャワーは翌日以降可)
・傷口の消毒や軟膏の塗布を続ける(必要に応じて)
・激しい運動や摩擦を避ける
・抜糸が必要な場合は、約1週間後に来院
また、炎症がひどくならないように、異常を感じたらすぐに医師に相談してください。
粉瘤をつぶしたり、自分で取り除こうとしても大丈夫ですか?
絶対に自分でつぶしたり、切ったりしないでください。
粉瘤を無理につぶすと、内部に炎症が広がり、さらに腫れや膿が溜まる原因になります。最悪の場合、細菌感染を起こして大きな傷跡が残ることもあります。
安全に治療するためには、必ず医療機関を受診し、適切な方法で手術を受けることが重要です。