アキレス腱の炎症「アキレス腱炎」とは
ふくらはぎの筋肉とかかとの骨を結ぶ腱を「アキレス腱」と言います。全身にある腱の中でも、よく知られた腱ですね。
このアキレス腱で炎症が起こった状態が「アキレス腱炎」です。特に、剣道、陸上、ジャンプの多いスポーツをする方に好発します。
アキレス腱炎が運動選手に多い原因
アキレス腱炎は、アキレス腱に繰り返し負荷がかかることで発症します。
特に、地面(床)を蹴りつま先を伸ばす動きに関連して発症します。そのため、運動選手の発症が目立ちます。剣道、陸上、サッカー、スキー、スノーボード、ダンス、バレエの選手や愛好家の方がよく発症します。
また、硬い地面(床)の上での運動であったり、寒い季節の運動であるなどすると、より発症リスクが高くなると言われています。
なりやすい人について
- 男性
- 肥満傾向の方
- 偏平足の方
- 高血圧の方
- ニューキノロン系の抗生物質を内服している方
放っておくとどうなる?
アキレス腱炎は、他の多くの疾患と同じように、放置していると悪化する可能性が高くなります。治療が遅れるほど治りづらくなり、アキレス腱断裂のリスクも高くなります。そのために長期の休養を強いられたり、スポーツを断念するというケースも見られます。
アキレス腱の違和感に気づいたら、お早めに当院にご相談ください。
動き始めに強い痛み?アキレス腱炎の症状
- アキレス腱の痛み、腫れ
- アキレス腱を押した時の痛み
- 運動を開始した直後の痛み
- 運動を継続すると痛みが和らぐ
上記のように、運動開始直後は痛みが出るものの、運動を継続することで痛みが和らぐという傾向があります。このことが、受診・治療の遅れにつながるケースも少なくありません。
違和感に気づいたら、早めにご相談ください。
アキレス腱炎の検査と診断
問診や触診を行った上で、超音波検査を行います。
また必要に応じて、MRI検査を追加します。
痛い時の対処法とアキレス腱炎の治療法
痛みの出始めは、まず安静を第一優先とします。運動を中止し、当院にご相談ください。
どれぐらいで治る?
軽症であれば、保存療法により3週間~2カ月ほどで治ります。
一方で重症のケースでは、半年や1年以上、治療期間を要するケースも少なくありません。短期間でスポーツに復帰できるかどうかは、軽症のうちに治療を開始できるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
保存療法
安静の上、消炎鎮痛剤の内服や外用などの薬物療法を行います。急性期で炎症が強い場合には、アイシングも有効です。
その後、リハビリテーションを行います。
動注治療(動脈注射治療)
炎症により異常な新生血管が生じている場合には、動注治療を行います。
動脈に細い針を刺して、そこから新生血管に蓋をして(塞栓)、炎症・痛みの軽減を図ります。
自分でできるセルフケアと予防法
ストレッチ
エキセントリックストレッチという方法をご紹介します。
- 安定した段差(1段)のある環境を用意します。階段などでも結構です。
- 痛みのある方の足の先3分の1ほどを、段差にかけます。
- そのまま、かかとをゆっくり下げていきます。つま先が浮いても構いません。
- アキレス腱が伸びていることを意識しながら、15秒キープします。
- 以上を3回繰り返せば1セットです。1日2セットを目安に継続してください。
※アキレス腱を伸ばすとき、多少の痛みが出ます。
急な負担をかけすぎない
予防としては、急な負担をかけすぎないことが大切になります。特に、長く運動から離れていた方は、アキレス腱が硬くなっています。また周辺筋肉の量も、少なくなっています。徐々に強度を上げるようにしてください。
また、上級者であっても、追い込み過ぎるとやはりアキレス腱炎のリスクが高くなります。
合う靴を選ぶ
縦・横幅・高さと、ご自身の足に合った靴を選びましょう。また、スピードを優先した底の薄い靴なども市販されていますが、十分なクッション性のある靴を選ぶことをおすすめします。
始めは軽い痛みで気づきにくい「アキレス腱付着部炎」とは
アキレス腱で炎症が起こる「アキレス腱炎」のうち、特に“アキレス腱が骨に付着しているかかと(アキレス腱付着部)周辺で炎症・痛みが出ているもの”を、「アキレス腱付着部炎」と言います。アキレス腱と同様、運動選手に好発します。
初期には痛みが軽微であり、気づかぬまま練習を継続して悪化させてしまうケースも少なくありません。
スポーツや肉体労働など
アキレス腱付着部炎が起こりやすくなる原因
アキレス腱付着部炎は、剣道、陸上、サッカー、スキー、スノーボードなどのスポーツ、あるいは肉体労働などによる繰り返しの負荷がアキレス腱にかかることを主な原因とします。
その他、骨・足の形態異常、筋力・柔軟性の低下、合わない靴との摩擦などがあると、より発症リスクが高くなります。
歩行時や安静時に痛むことも?アキレス腱付着部炎の症状
- アキレス腱の痛み(特にかかと付近)
- つま先を上に向けたときのアキレス腱の痛み
- 運動を開始した直後の痛み
- 運動を継続すると痛みが和らぐ
運動を開始してすぐに痛みが出ても、その後運動を続けることで和らぐという性質があります。このことが、受診・治療の遅れにつながることも少なくありません。
アキレス腱付着部炎の検査と診断
問診、触診の上、レントゲン検査を行い、診断します。レントゲン検査では、骨棘や骨折、変形の有無を調べます。
必要に応じて、MRI検査を追加します。
痛い時の対処法とアキレス腱付着部炎の治療法
アキレス腱やかかと付近に痛みが出た時には、まずは安静にしてください。運動を中止し、当院にご相談ください。
保存療法
消炎鎮痛剤の内服や外用、装具療法などを行います。
痛みが強い場合にはステロイド注射を行うこともありますが、腱の強度の低下などが懸念されるため、回数・期間を決めて限定的に使用します。
その上で、アキレス腱のストレッチなどのリハビリテーションを行います。
動注治療(動脈注射治療)
炎症により異常な新生血管が生じている場合には、動注治療を行います。
動脈に細い針を刺して、そこから新生血管に蓋をして(塞栓)、炎症・痛みの軽減を図ります。
ハイドロリリース
リアルタイムで超音波画像を確認しながら、筋膜へと少量の麻酔液を含んだ薬液を注射します。癒着した筋膜を剥がし、痛みの軽減を図ります。